先日、
ホワイトイヤーの試聴を希望されたお客様から、「大変よく聞こえました。しかし本人(お母様)が、お金を出せば同様に聞こえる小型で邪魔なコードがない補聴器があるに違いない、と思ったようで、どうしてもホワイトイヤーを使うと言いません。そのため今回の購入は見合わせます」というコメントを頂きました。
ご試聴後 随分経って、長い場合は1年近くらいしてから注文を頂くことが時にありますが、その様なお客様の状況はこのようなことなのかもしれません。だとしたらホワイトイヤーの他に多くの機種を試聴されたものと思います。
今回は、ホワイトイヤーなら聞こえることが少なくない「最重度難聴」がどれ程の難聴なのかを理解して頂きたくて書いてみました。
「補聴器を使用して改善出来るのは最高語音明瞭度まで」と多くの補聴器屋さんは考えているようです。「最高語音明瞭度」という言葉から推測するとそうであって当然と感じられるかもしれません。しかし、これ以上はどうにもならないとしたらホワイトイヤーの聞こえはないのです。
最高語音明瞭度とは最も聞き易い音量の言葉を、間違わないで聴き取ることが出来る割合のことです。そしてこれは、高度難聴以上になると深刻度が増すに比例して著しく低下します。最高語音明瞭度は通常、高度難聴の初めで80%くらい、高度難聴も中程なら50%以下、重度難聴になればもやは何も聴き取れないといったところでしょうか。
このようなことから、補聴器が言葉を聴き分けるためのツールとして十分効果を期待できるのは中度難聴までと認識している補聴器屋さんは多い様です。
また、市販補聴器の殆どは中度難聴までを対象としていて、高度難聴や重度難聴用補聴器の機種は大変少ないのもこのような事情からだと考えられます。
よく経験されるものと思いますが、声には聴き取り易い声と聴き取りにくい声があります。このため「語音明瞭度測定」を聴き取りやすい声で行うのと聴き取りにくい声で行うのとでは結果にかなりの差が現れます。
ホワイトイヤーは単に音量を聴き取りやすい大きさにするだけではなく、マイクで捕らえられた音声を、聴き取り易い形に加工してイヤホンから輻射します。重度難聴でも言葉を聞き聴き分けできるのはこのためです。
難聴の度合いを分類する方法はいくつもあり紛らわしいのですが、一般的には91dBHL以上を「重度難聴」とし、それ以上は区別しない方法がよく用いられます。
「最重度難聴」という言葉は、世界保健機関の分類法の一つで用いられていますが、これも91dBHL以上の難聴のことです。つまり先の「重度難聴」と世界保健機関の「最重度難聴」の深刻さは同じです。
91dB以上は「聾」とも呼ばれ、補聴器を使っても言葉によるコミニケーションは不可能とされています。だから一般的には、91dB以上は分類しても意味がないものと思います。
ところが、ホワイトイヤーを使えば91〜100dBHLは多くの場合十分に聴き取ることが出来るのです、お客様の中には115dBHLでもよく聞こえる方もいらっしゃいます。しかし100dBHLあたりを越えると、ホワイトイヤーでも役立たない方の割合が急激に多くなります。そのため当社では、91〜100dBを重度難聴、101dB以上を最重度難聴として区別しています(重度難聴と最重度難聴を区別するのは当社独自の分類法です)。
勿論、ホワイトイヤーを使っても91〜100dBHL或いはそれ以下なのに聴き取れない場合もあります。原因は、聴き分けのために必要な音声信号周波数に全く聞こえない部分がある場合と、聴覚神経が音声を分析する能力がない場合とがあります。
ホワイトイヤーなら聞き分けが出来ることが多い100dBHLという音量は、最も深刻な中度難聴にようやく聞こえる70dBHLの約30倍の大きさです。また110dBHLなら約90倍です。